Akihiro Tsuruta鶴田 彰宏

工学研究科エネルギー理工学専攻 博士後期課程修了
  • 1988年生まれ
  • 2013年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2013年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2013年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)採用
  • 2015年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)修了
  • 2015年4月 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 研究員

磁場中特性向上に向けたSmBa 2Cu3Oy高温超伝導薄膜のナノ構造制御

エネルギー問題の解決や医療及び輸送技術の発展に対し、超伝導現象を用いた無損失送電や強磁場発生が必要とされています。数ある超伝導材料の中でも、1987年に発見されたREBa 2Cu3Oy (RE=希土 類元素、REBCO)は超伝導転移温度が90Kを超え、液体窒素を冷媒として運用することが可能です。更に磁場中における超伝導特性が優れていることから、超伝導マグネットへの応用が期待されています。セラミックスであり、電気的異方性の非常に強いREBCOの実用化には、単結晶基板や配向性中間層上にエピタキシャル薄膜として成長させる必要があり、これまでの研究によってキロメータ級のREBCO線材作製が実現されています。

REBCOは第2種超伝導体に分類され、外部磁場が量子化磁束として超伝導体内に侵入します。そこに電流を流すと、量子化磁束が電流からローレンツ力を受け運動するため、超伝導状態が破壊されます。量子化磁束の運動を抑制する方法として、ナノサイズの常伝導析出物(ピンニングセンター)の導入が有効であることが知られています(図1)。ピンニングセンターのサイズや形状、数密度はREBCOの磁場中超伝導特性に強く影響し、実用化に必要とされる磁場中特性に向け、ナノオーダーの構造制御が求められます。

私の研究では、REBCO薄膜の磁場中超伝導特性の向上と制御を目的として、ピンニングセンターを導入した薄膜のナノ構造制御を行っています。REBCO材料としては希土類元素に Smを用いた SmBa2Cu3O(SmBCO)yを使用し、パルスレーザー蒸着(PLD)法を用いて単結晶基板上に薄膜を作製しています。ピンニングセンター材料としてはBaHfO (BHO)3を用いました。BHOはREBCO薄膜作製時に添加すると薄膜内でナノサイズの柱状欠陥(ナノロッド)を形成することが知られています。まず私は、薄膜作製条件及びBHO導入手法を改良し、直線的かつ連続的なナノロッド導入を実現しました(図2 (a))。このような形状のナノロッドは、平行に侵入する磁場に対し非常に強いピン止め力を発揮し、世界トップレベルの磁場中特性を示しています。さらに、幾何学的にシンプルな形状であるため、磁束運動や磁束状態等の物理現象の検討にも最適であり、そういった観点からも研究を進めています。実用化に対し最も有効なピンニングセンターの形状は、分布やサイズの制御が困難なパーティクル状ですが、私の研究では積層構造とナノロッドの組合せにより、BHOパーティクルの導入及び制御にも成功しています(図2 (b))。

図1 (a)ピンニングセンター無し及び(b)有りの、磁場中における第2種超伝導体の模式図

図2 (a)BaHfO3ナノロッド及び(b)BaHfO3パーティクルを導入したSmBa2Cu3Oy薄膜の断面TEM観察像

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