Yuta Mizoguchi溝口 裕太

社会基盤工学専攻 博士後期課程2年
  • 1987年生まれ
  • 2011年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2014年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2015年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用
  • (2011年4月〜2014年3月 東日本旅客鉄道株式会社)

河川のダイナミズムと流程方向の景観連続性を考慮した生態系モデルの開発

漁業資源や水質管理を目的とした生態系及び物質循環シミュレーションモデルが湖沼、内湾など閉鎖性水域を中心に開発されています。こういったツールは水圏環境の把握と将来予測に極めて有用であることから、河川生態系の特異性を包括的に取り扱えるモデルへと拡張し、河川へ適用することが求められています。私の研究では特異性の中でも、流程に沿って大きく変化する河川景観及び、出水による物理基盤の攪乱と更新(河川のダイナミズム)に着目し、河川に生息する魚類や底生無脊椎動物(以下、底生動物)の群集動態や時空間的な水質変動だけでなく、物理基盤、生物相及び物質循環系の相互作用の理解とメカニズムの解明を試みています。

これまでに、河川水の流動と河床地形を解析する流れ・物理基盤モデル、景観の流程変化が再現可能な生物相及び物質循環を内包した生物・物質循環モデルのフレームが概ね完成しました。特に、生物相として藻類、底生動物及び魚類、水質項目として粒状・溶存態有機物及び溶存態無機物などを考慮しています(図-1)。モデルの有用性を検討するために現地河川を参考に諸量を設定し、瀬・淵構造が発達した河川での流動特性(図-2a)と生物現存量についての解析を実施しました。これより、一次生産者として底生動物や藻食性魚(アユ)の餌資源として生態系を支える付着性藻類については、良好な光環境である瀬や砂州周囲での現存量が大きくなる傾向を再現できました(図-2b)。また、移動性に乏しい底生動物の生息分布は餌資源の一つである藻類に制限され(図-2c)、一方、藻食性魚分布は物理条件に対する選好性が加味された行動モデルにより規定されることから、藻類分布に大きく依存しない結果が得られました(図-2d)。

このように、生物の分布特性や群集構造などサブモデル単位でのモニタリングデータとの比較を実施し、本モデルの有用性や適用範囲について検証を進めています。今後は、水系全体へ本モデルを適用するとともに、流量及び流送土砂量の変動に対する河川生態系の応答特性について検討する予定です。この結果は、日本各地の河川上流部に建設されたダムが、その下流域の生態系へ与える負荷を最小化するための運用計画策定を支援する知見を提供することが可能であると考えています。

図1 河川生態系の物質循環(※魚類は除く)

図2 a)水深・流速、b)付着性藻類現存量、c)底生動物現存量及びd)藻食性魚現存量のシミュレーション結果

未来の研究者一覧に戻る