Hirotaka Sugiura杉浦 広峻

マイクロナノシステム工学専攻 博士後期課程1年
  • 1990年生まれ
  • 2016年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2016年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2016年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)採用

ロボット統合型マイクロ流体チップを用いた単一細胞の機械特性計測技術

 生体機能の解明や医療、創薬を目的として、生体組織を細胞レベルで分析する研究が、近年活発に行われています。このような細胞生理学の進歩には、微細加工技術により作製されたマイクロ・ナノデバイスの計測、操作技術など、工学的な技術の発展が大きく寄与しています。現在我々の研究グループでは、細胞の力学的な作用に着目し、複雑な生体細胞の特性解明や、応用する技術の開発を進めております。とりわけ細胞の機械的な特性(硬さ、表面張力、内圧など)は、細胞の生理学的状態と密接に関係していますので、定量的な特性評価技術は生物学の研究現場から強く求められています。

 そこで私は、圧縮変形印加による細胞の機械特性計測を実現可能とする、ロボット統合型マイクロ流体チップの研究、技術開発を進めています。従来、AFMやマイクロマニピュレータなどによって実現されてきた細胞の機械特性計測技術ですが、化学分析などに用いられるマイクロ流体チップに実装することによって、スループットの向上や、計測環境の安定化、機能統合化による多角的評価を実現することができると考えられます。この構想の実現には、液中で構造物を高精度に駆動、制御する技術や、高精度なセンシング技術が求められます。しかしながら既存の計測技術では、気中環境のマイクロ計測デバイスにはない制約や困難から十分な計測精度が担保できず、新規技術による克服が必要でした。そこで現在までに我々は、ピエゾアクチュエータを利用した変位伝達機構による、液中オンチッププローブの高精度位置決め技術や、画像センサによる走査モアレ縞を用いた高精度変位計測技術を確立しました。これにより、iPS細胞など動物性細胞が集中的に存在する10μmスケールの単一細胞に対して、1nmステップの押し込み変形の印加と、精度誤差1nm、100 pNの変形量、反力計測を達成しています。これは、マイクロ流体チップに搭載した計測機能として他に比類の無い高い精度であり、市場に普及するAFMの計測精度に匹敵します。現在、細胞骨格に由来する弾性特性を説明できる力学モデルの構築や、特異細胞株間の計測結果の比較とあわせて、詳細な細胞の機能解明と評価方法の開発を進めています。

 本研究に用いるデバイス作成技術や計測技術は、様々な用途で広く用いることができます。今後、マイクロ計測デバイスの技術開発側から、生物学進歩に大きく貢献することを目指します。

図1 ロボット統合型マイクロ流体チップによる細胞計測の概念図

図2 走査モアレ縞を利用した高精度計測技術

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