Tamba Takahiro 丹波 高裕

航空宇宙工学専攻 博士後期課程3年
  • 1989年生まれ
  • 2015年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2015年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2017年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用

独自のモデル実験で衝撃波・乱流物理への貢献を目指す

 流体現象である衝撃波や乱流は、それぞれが興味深い特性を持っています。その上、それらが干渉した際には相互に影響を及ぼし合い、衝撃波についてはその形状や圧力、乱流についてはそのスケールや速度変動成分などが変化します(図1)。こうした干渉はなんら特別なものではなく、遠く宇宙の果ての恒星誕生プロセスから、地球大気圏における超音速旅客機の開発やソニックブーム問題まで、幅広い分野に関わる重要な現象です。そのため、長年にわたり理学・工学の研究者が衝撃波と乱流の干渉について研究を重ねてきましたが、未だそのメカニズムや生じる結果について明らかでないことも多いのが現状です。

 衝撃波と乱流の干渉問題で、特に不足しているのは系統的な実験データです。研究の最初期には理論面から、近年は数値計算流体も駆使して、衝撃波と乱流(あるいはそれに準じる擾乱)の干渉が扱われてきましたが、それを実証する実験的研究は未だ多くはありません。その理由の一つに、干渉の影響を適切に評価する実験系を構築すること、それ自体が困難であることが挙げられます。一般的に衝撃波は伝播とともに減衰し、その性状が変化します。また一般に、乱流は内部の速度変動ベクトルが非一様で指向性を持ちます。そのため、やみくもに衝撃波と乱流を干渉させた場合には、干渉の影響のみを適切に評価することができません。

 そこで本研究では、新たに対向衝撃波管(図2)という独自の装置を開発しました。この装置では、減衰しない衝撃波と、等方的な(指向性を持たない)乱流を干渉させることが可能となっています。加えて、この装置では衝撃波と乱流の強さを独立に設定できるために、従来では困難であった衝撃波-乱流干渉のモデル実験を、幅広い実験条件で系統的に行うことができます。

 現在は本装置を用い、乱流との干渉によって衝撃波が受ける影響に注目して研究を進めています。干渉の影響は衝撃波面に強く生じることから、流体の屈折率の違いを利用したシャドウグラフ可視化法を用いて衝撃波面の観測を行い、衝撃波-乱流間の相対的な強弱関係と衝撃波の変調の相関を見出すことで、広く衝撃波・乱流物理の発展へ貢献することを目指しています。

図1 衝撃波と乱流の干渉

図2 対向衝撃波管

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