超高感度マイクロ磁気センサの
開発とその応用

電子情報システム専攻 准教授
内山 剛

1993年に名古屋大学の毛利教授らが発明した磁気インピーダンス(MI)素子を利用したセンサ技術を発展させることにより、超高感度マイクロ磁気センサを開発しています。現在、MI素子は携帯電話やスマートフォンの電子コンパス機能に利用されています。また既に、高感度磁気センサとして1nTレベルのMIセンサが商品化されています。また、先進的な診断医療技術等への超高感度マイクロ磁気センサ応用を目的として、研究室で試作した超高感度マイクロ磁気センサを利用した、生体磁気の計測を行っています。

MI効果とは、アモルファス磁性ワイヤに高周波正弦電流を通電すると、外部磁界によって磁性体のインピーダンスが極めて大きく変化する電磁現象です。通電 する正弦電流の周波数を高くするとインピーダンス変化量(磁気感度)が大きくなることがわかり、1995年には,通電する高周波正弦電流をパルス電流にすることで、さらに高感度化に成功しています。上記のような,インピーダンス変化量を測定する手法では、磁極の判別ができないため、2002年にMI素子の周りにピックアップコイルを巻き、印加磁界に比例した誘導起電力を出力とすることにより、磁極の判別が可能となっています。電子コンパス用にIC化されている、CMOS回路ではパルス通電による高調波を利用した高周波励磁を実現しています。図1はCMOS-ICとMI素子によるリニア磁界センサの構成を示します。MI素子を利用した磁界センサでは、素子の熱雑音が小さいため、室温でfT(10-15T)オーダーの磁界検出分解能を有することが理論的に予測されています。

細胞組織の電気活動に伴う微小な生体磁気信号を検出する方法としては、従来技術として、超伝導量子干渉磁力計(SQUID)による心磁図(MCG)や脳磁図(MEG)が知られています。活動電流によって体表面に発生した電位計測に対して、磁気計測は活動電流が生じている部位の位置推定に適しているため、その特長は、診断技術に生かされます。脳磁図においてはてんかんの焦点位置の診断や、外部刺激に対する脳研究へ応用されています。また、心磁図においては、不整脈の部位の推定や虚血性の心疾患などの診断に優れていることを示す報告例があります。しかし、医療用のSQUIDシステムは、冷却するための高価なヘリウムが必要なことや、大規模な磁気シールドルームが必要なため、生体磁気による診断技術の普及の妨げになっています。

以上のような理由から、我々は、常温で動作し、小型で操作性の良いMI素子による超高感度マイクロ磁気センサによる生体磁気計測を行っています。図2は試作した超高感度マイクロ磁気センサにより一過性の不整脈を記録した例(心電図との同時記録)です。脳磁場についても研究室で独自開発したセンサシステムにより、聴誘発脳磁反応についての実験を行っています。

現在は、MIセンサを利用した生体磁気計測技術を医療診断技術として発展させるために、 医学部の先生との共同研究も進めています。モルモットから摘出した自発的な電気活動を行う消化管筋層標本(胃、空腸-回腸)を主に用いた評価実験により、組織依存性のある活動電位発生に伴う磁気信号の検出に成功しました。細胞組織の機能計測装置としてMIセンサを利用したシステムの有用性を確認しています。

図1 CMOS MI センサ回路

図2 心電図(a)と試作マイクロ磁気センサによる不整脈記録(b)。

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