微細気泡を活用して
資源回収・環境浄化する新技術の開発

化学・生物工学専攻 准教授
安田 啓司

難分解性物質や細菌を含む排水の処理には、多くが酸化剤や凝集剤などの有害な薬品が添加されており、水中の有価物質はほとんどリサイクルされていないのが現状です。微細気泡とは液体中に存在する100μm以下の小さな気泡のことです。微細気泡を利用する技術は、薬品添加が無く、かつ有害物質を発生しないことから環境負荷が低く、大気圧・室温で操作できる安全性が高い技術といえます。本研究室では微細気泡を超音波、加圧・せん断力、高速流動の3種類で作成しており、それぞれの特徴を生かした技術を開発しています。

超音波とは20kHz以上の人間の耳では聞き取れない音波のことです。液体に強力な超音波を照射すると伝搬に伴い液体中に高圧域と低圧域ができ、低圧域で微細気泡が発生し、膨張と収縮を繰り返した後に圧壊します。圧壊時は数1000℃・数100気圧・数100m/sという高温・高圧・高速流動の極限状態が、数100μmの領域に数μ秒の寿命で生じます。この現象を超音波キャビテーションといい、水中で化学反応や機械的破砕を起こすことができます。これまで排水中の難分解性物質の分解や機能性ナノ粒子の合成などが研究されてきましたが、工業レベルで使用するためには、反応速度を高くする必要があります。本研究室では、撹拌下で超音波照射(図1(a))することにより、反応速度を5倍に増大させることに成功しました。また、超音波場の重ねあわせにより反応が相乗的に増大し、2つの振動子の周波数が近いほど、相乗効果が大きくなること(図1(b))を明らかにしました。現在は、振動子のインピーダンスをモニターしながら、周波数、および液高さを最適化することによって超音波反応器のさらなる高効率化に挑んでいます。
 
加圧とせん断力で気泡を微細化する発生方法では、大きさが数10μm以下の安定した大量の微細気泡ができます。100μm以下の安定した微細気泡(ファインバブル)は、表面積が大きい、浮上速度が低い、表面が帯電しているなどの特徴があります。本研究室では、バイオエタノール製造時の排水処理、エマルション排水からの油分リサイクルにおいてファインバブルの有効性を明らかにしました。近年は、メタンをファインバブル化にする装置(図2(a))を製作し、メタンハイドレート(図2(b))を人工的に高速で作成することに成功しました。今後は、ハイドレートを混合ガスの分離、天然ガスの輸送などへ応用展開する予定です。
 
パイプを流れる液体の流路を縮小すると、液速度が高くなると同時に減圧し微細気泡(図3)が容易に発生します。その後、流路の太さを急激に元に戻すと圧力が回復して微細気泡が圧壊し、高温・高圧の反応場が形成します。この流動キャビテーションは大型化が容易であることが特徴です。本研究室では、排水中の大腸菌の殺菌、および有機塩素化合物の分解を可能にしました。現在、省エネルギーな排水処理装置を開発するために、縮小部の形状を最適化しています。

図1 超音波化学反応の促進(青い部分は反応領域)(a)撹拌による促進,(b)超音波場の重ねあわせによる促進

図2 メタンハイドレートの(a)高速作成装置,および(b)(a)で作成したハイドレート

図3 ガラス管の流路の縮小により容易に発生できる微細気泡(白い部分)

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