白と黒の物質から
鮮やかな色を示す材料を作る

物質制御工学専攻 准教授
竹岡 敬和

恐竜の体表の色が明らかになったという話はご存じでしょうか。中国の遼寧省において、非常に状態の良い恐竜の化石が発見されたことにより、恐竜の体表にある羽毛が採取され、その中のメラニン色素を解析した結果、それが分かったということです1)。また、色素だけではなく、光の波長サイズの微細構造があることで、光の散乱や干渉が原因で色を示していたことも明らかになったそうです2)。このような微細構造による発色を構造色と呼びますが、現代でも多くの生物が構造色を利用しているのです。

我々は、このような構造色を示す材料を、生物の構造発色性の体表に存在する微細構造を参考にして構築することに取り組んでおります。安全で耐薬品性や耐光性の高い材料を利用して構造発色性材料が安価に得られれば、現在の色素や顔料に代わる色材にもなり得るからです。構造色について知っている人の多くが持つ共通の印象は、ギラギラとしていて、見る方向や光の照射方向によって色相が変わるということでしょう。実際に、多くの構造発色性材料は、その色相に角度依存性があり、このことが応用範囲を狭めているとも考えられます。我々は、構造発色性材料の利用価値を高めるために、角度依存性のない構造色を発現する材料を開発してきました3)-9)。いかなる微細構造を作るかが、この研究の鍵と思われるかもしれませんが、最近の研究を通して新たな知見が得られました。構造発色性材料を人工的に構築するにあたって、可視光の波長範囲に余計な吸収を持たない材料を利用することが適切と考えられてきたため、その材料の多くは透明もしくは白いものを利用する場合が多いのです。しかし、これらの材料だけで角度依存性のない構造色を発現するような微細構造を構築しても、実際に得られた材料から観測される構造色は白くぼやけてしまうことがほとんどでした。ところが、このような微細構造の形成に加えて、少量の黒色物質を材料中に導入すると、微細構造由来の構造色が際立って見えることが分かってきたのです。鮮やかな青色を示すことが知られているモルフォ蝶の羽なども、鱗粉上にある微細構造だけでなく、鱗粉の下に褐色や灰色の色素を有することが原因で青色を際立たせていることが知られています。つまり、材料への適切な微細構造の構築に加えて黒色物質を導入することが、可視光全域に渡って生じる多重散乱を抑制するために、鮮やかで角度依存性のない構造発色性材料構築の実現に結びつくと明らかにしたのです。たとえば、ある白と黒の微粒子を混ぜるだけでも鮮やかな色が発するようになります10)。自然は、同じような方法を随分前から知っていたようですが。

【註】 1)Q. Li et al., Science 327, 1369(2010). 2)Q. Li et al., Science 335, 1215(2012). 3)Y. Takeoka, J. Mater. Chem. 22, 23299(2012). 4)Y. Takeoka, J. Mater. Chem. C 1, 3059(2013). 5)Y. Takeoka et al., Angew. Chem. Int. Ed., 52, 7261(2013). 6)Y. Takeoka et al., Sci. Rep., 3, 2371-1 (2013). 7)R. Hirashima et al., J. Materials Chemistry C, 2, 344(2014). 8)S. Yoshioka et al. ChemPhysChem, 15, 2209(2014). 9)M. Teshima et al., J. Materials Chemistry C, 3, 769(2015). 10)ドラえもん もっとふしぎのサイエンスのYoutube動画において、白と黒の微粒子を混ぜた懸濁液の絵の具としての利用が紹介されている。
https://www.youtube.com/watch?v=qCIs9sYDHXo

図1 様々な色の構造発色性顔料と、これらを用いて描いた絵

図2 粒径の違う球状シリカ微粒子とカーボンブラックを組み合わせることで得られた異なる3色の構造発色性顔料

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