生活支援ロボット分野の安全研究

機械理工学専攻 教授
山田 陽滋

 サービスロボットの中に、「生活支援ロボット」と分類される3種類のロボットがあります。具体的には、移動手伝いロボット、搭乗型ロボット、そして身体アシスト型ロボットの3タイプのロボットのことで、「人間と共存し、彼らのQOL(Quality of Life)に直接貢献するサービスロボット」と定義されています。これらが今後、様々なサービスの担い手となって社会実装されていくことを期待するわけですが、人に働きかけて初めて有用性を検証できるタイプのロボットですから、安全性確保はとりわけ重要な技術要件となります。本稿では、前半においてわたしが取り組んできている身体装着型ロボット(以下、PA)の安全研究をひとつ紹介し、後半では、生活支援ロボットの開発から社会実装までに関わる人々、いわゆるステイクホルダーによって社会的な責任分担構造を構築する社会技術に関する取組みついて紹介します。

 安全研究の対象には2つの側面があり、V&Vと呼ばれています。前のVはVerification(安全性検証)で、どのような物理パラメータがいくらであれば対象機器(この場合はロボット)が安全に機能するかという基準を見出すことです。他方、後ろのVはValidation(妥当性確認)で、検証された安全基準を対象機器が性能的に満たしているかどうかを確認することです。

 要介護者の介助や重量物運搬等の作業の際の腰部負担を軽減する目的で装着する、PAロボットの腰痛リスクに対する安全性を研究した成果の一例を図1と図2に掲げます。図1は、腰痛の原因となる椎体終板の損傷が生じやすいと言われるL5S1部における荷重耐性値を対象として取り上げ、数多くの過去の論文報告例を集積してカーネル密度推定法を利用し、年齢との相関でリスクカーブによって表現したものです。たとえば老々介護の際に、高齢者が装着する場合の負荷軽減効果を見たいというような場合でも、年齢に応じて安全基準が見出せるようになりました。図2は、PAを装着して適正な姿勢で重量物を搬送した場合に、上記の安全基準を満たせるかどうか、妥当性確認のために作成したシミュレータの出力結果の一例です。マルチボディダイナミクスに剛体でなく弾性体を適用する技術によって、腰部に作用する曲げモーメントやこれに対する応力を容易かつ解析的に調べられるようになっています。

 ところで一般に、安全性を損ねる原因は、リスクアセスメントをベースとする設計原則の存在を知らない、あるいはこれに従わない機器開発者やシステムインテグレータの過誤に起因する場合の頻度が、機器の故障発生頻度に比べて格段に高いことがわかっています。生活支援ロボットの場合も、実証実験の段階からこれを回避するために、規制・規格・認証で構成される開発支援構造を適正に作っておく必要があります。これまで、筆者はこのような社会技術についても、制度設計提案から構築まで中心的にかかわってきました。図3はその結果ですが、生活支援ロボットの規格とガイドラインを作りました。近年は認証実績が報告されるようになり、制度として定着しつつあります。

図1 腰椎損傷レベルの年齢別リスクカーブ

図2 弾性体を組み込んだマルチボディシミュレーション

図3 NEDO「生活支援ロボット実用化事業」による制度設計

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