工学研究科コミュニケーションデザイン室の開設
?大学が果たすべきパブリック・リレーションの半歩先を試行する?

工学研究科コミュニケーションデザイン室長 中村 昭典

CD室入口付近にて?部署名には大学と社会との対話を支援するという意図が明示されている?

本年4月1日付けで工学研究科にコミュニケーションデザイン室が新たに開設されました。同室は工学部・工学研究科と社会とのコミュニケーションを支援することを目的としています。社会の中で大学が担うべき役割を考えれば、社会から必要とされる情報開示はもちろんのこと、大学として伝えるべき情報の量を増やし、質を高めていくことは、今や必要不可欠な取り組みとなっています。同室は、その流れの半歩先をくみ取り、工学研究科が果たすべきパブリック・リレーション機能の研究実践部署として研究科長の強い意向を受けて開設されました。これは国立大学の中でも先端的な試みといえるでしょう。

大学におけるパブリック・リレーションの対象は、すべてのステークホルダに及びます。たとえば本学への進学を希望される受験生とその保護者・高等学校教諭から、本学と共同研究をすすめられる機関、本学が持つ教育研究上の知見の生涯学習を望まれる一般市民、そして卒業生・修了生を採用頂ける産業界や研究機関まで、実に広範囲に亘ります。昨今、大学の情報開示が活発になされていますが、私立大学に比べて、国立大学ではまだ不十分という指摘もあります。工学研究科では、必要とされる情報開示に積極的に取り組むことはもちろんのこと、コミュニケーションのあるべき姿を模索し、その手法の開発と実践を行うべく、様々な実験的な試みを展開していく方針です。

取り組むべき課題の一端を紹介しましょう。日本の工学研究をリードする立場にある本学工学部・工学研究科は、未来のものづくりを担い、グローバルに活躍する研究者を養成することが求められていることは言うまでもありません。現に本学からは毎年、多くの研究者のタマゴが、国内外の研究機関や産業界へ巣立っています。

しかし一方で、本学工学部への入学者を俯瞰してみると、本学が立地する愛知県からの入学者が5割を超え、地元4県(愛知・岐阜・三重・静岡)からの入学者で 7割を超えています(図1参照)。

そして入学時アンケートや将来の進路希望調査からは、地元企業での就職を願う志向がマジョリティとなっている姿が透けて見えます。この強い地元志向性は、郷土愛などの観点からは喜ばしいことでありますけれども、このグローバル化の中で本学が担うべき社会からの要請との間には開きが大きいことも否めません。こうした課題の解決には、本学が求める学生像をきちんと発信すると同時に、グローバルな舞台で活躍できる研究者を志向する若者たちにとって、魅力的な環境が整っている現実を明示していく情報コミュニケーションが不可欠だと考えます。
同時に、コミュニケーションの手法も日々アップデートしなければなりません。たとえば 10代・20代の若者がコミュニケーションに活用しているメディアは、ソーシャルメディアへのシフトが顕著となっています。またソーシャルメディアを活用するデバイスも、10代で63.3%、20代で87.9%がスマートフォンを活用しています。そして数あるソーシャルネットワークサービスの中でも、10代で70.5%、20代で80.3%がLINEを活用しており、Facebookやmixiを大きく引き離しています(データはいずれも総務省、図2参照)。

SNSは言うに及ばず、コミュニケーションをデザインする上でキーテクノロジーとなる情報ネットワークは、たった1年で大きく様変わりしてしまうほど、驚異的なスピードで進化を続けています。大学のパブリック・リレーション対応は、こうした流れの速い潮流をキャッチアップする必要があります。
コミュニケーションデザイン室では、工学研究科がこの領域で探求している学術的な知見を有効活用し、コミュニケーション手法やコンテンツ作成における新しい試みを提示できればと考えています。

図1/平成26年度工学部入学者の出身高校の県別分布
 

写真/コミュニケーションデザイン室入り口のプレート前で、松下工学研究科長(左)と中村

図2/10代の若者のメディアの使い方は1年でメールからSNSへと大きくシフトしている(情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査、2014年4月総務省発表)

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