未来社会創造機構― 名古屋大学における今後の産学官連携 ―

未来社会創造機構長財満 鎭明

われわれは、高齢化社会や環境問題など、世界規模で取り組むべきさまざまな課題に直面しています。わが国は、科学技術の先進国としてこれらの問題に率先して対峙し、その成果を世界と共有するとともに、活気ある持続可能な社会の構築を目指していく必要があります。このような状況を踏まえ、大学に対しても、社会的課題を解決するためのイノベーション創出や社会実装に向けた取り組みが強く求められています。

文部科学省は平成25年度に、革新的イノベーション創出プログラム(COI)プログラムを開始しました。これは、10年後に目指すべき社会像からバックキャスティングにより研究開発課題を設定し、産学官が連携して社会実装につなげていくという、ビジョン主導型のチャレンジングな研究開発を支援するものです。

このプログラムに対して、本学では、トヨタ自動車の江崎氏と小野木教授をそれぞれプロジェクトリーダー、研究リーダーとした体制で、「多様化・個別化社会イノベーションデザイン拠点〜高齢者が元気になるモビリティ社会〜」をテーマとした提案を行い、中核拠点の一つとして採択されました(図1)。また、COIプログラムでは、産学官が「一つ屋根の下(Under one Roof)」で異分野融合型の研究開発を行うことも特徴の一つであり、そのための「場」としての「ナショナル・イノベーション・コンプレックス(NIC)」が、本年6月に四谷通りに面した場所に整備されました(図2)。

未来社会創造機構は、このCOIプログラムを強力に支援し推進するために、工学研究科、情報科学研究科、環境学研究科、医学系研究科の積極的な協力を得て、専任教員・スタッフからなる新たな組織として、平成26年4月に設立されました。特に、本機構では、「一つ屋根の下」での密接な連携を実質化する仕組みとして、「産学協同研究講座・部門」という制度を活用しています。この仕組みは、大学が企業から経費と人材を受け入れ、企業の研究開発拠点を大学内に設置するものですが、この仕組みを取り入れることによって、大学、企業の異分野の研究者・技術者がビジョンと技術開発に対するロードマップを共有しながら研究開発を行うというCOIプログラムの精神を実現することが可能になりました。

この一つ屋根の下とビジョン主導型の研究開発というコンセプトは、従来のシーズ主導型の研究開発とは大きく異なっており、戸惑うことも多々ありましたが、異分野が連携した大型の産学官連携を進める上では現在は不可欠になりつつあり、大学がイノベーション創出や社会実装に貢献するためには必要な要素と考えています。また、研究科での基礎教育、専門教育に加えて、一つ屋根の下での産学官の共創場は産業界を巻き込んだ実践的人材育成のプラットホームとしても魅力的です。本学は、松尾プランNU MIRAI2020でも、「オープンイノベーションのための新しい産学官連携研究開発体制の構築」や「社会的価値創成に貢献できる実践的人材の育成」を謳っているところであり、未来社会創造機構をどのように活用できるかが本学の産学官連携の重要なポイントと考えています。

図1 名古屋COI拠点のビジョンと概念図

図2 ナショナル・イノベーション・コンプレックスの外観

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