附属プラズマナノ工学研究センター
― 社会イノベーションを目指した先端プラズマナノ科学 ―

工学研究科附属プラズマナノ工学研究センター長 大野 哲靖

 1961年に名古屋大学に全国共同利用研究所としてプラズマ研究所が創設されて以来、名古屋大学はプラズマ研究の中心として55年という長い歴史を有しています。核融合発電を目指した高温プラズマ研究は1989年に改組された核融合科学研究所(現在 岐阜県土岐市)に引き継がれましたが、産業応用を目指した低温プラズマの研究は名古屋大学において著しい発展を続けました。2002年に採択されましたグローバルCOE「先端プラズマ科学が拓くナノ情報デバイス」活動の成果を引き継ぎ、2006年に低温プラズマ研究の拠点として工学研究科附属プラズマナノ工学研究センターが設立されました。

 電気放電によって原料をプラズマ化させ、通常の化学反応では作ることが難しい新しい機能をもった材料を生み出す手法が低温プラズマナノ工学です。この低温プラズマナノ工学は、大規模集積回路(LSI)や太陽電池など現代社会を支える多くの最先端機器製造に必要不可欠な技術として用いられています。しかし、低温プラズマには、電子、イオンに加えて、エネルギー的に活性状態にある多種類のガス粒子(ラジカル)が含まれており、それらが複合的に相互作用するために現象が極めて複雑です。そのため、製造現場では、多くの人的資源と時間を費やして、膨大な試行錯誤を行い、低温プラズマを用いた最適な製造プロセスを見つけるという手法が用いられてきました。しかし、年々製造に必要な精度は上がり、現在ではわずか水素原子4個を並べた程度の大きさの構造を制御する必要があります。このような高精度の加工のためには、職人芸的な試行錯誤の製造では対処できなくなっており、低温プラズマ科学に立脚した最先端のモノづくりが求められています。

 プラズマナノ工学研究センターには、独自に開発したラジカルイオンモニターや高精度レーザー計測技術など低温プラズマ中の粒子の動きを直接見る最先端の計測技術があります。また、赤外光などを用いて、プラズマが照射されている材料表面での反応過程と化学構造変化を計測することも可能です。この高度なプラズマ診断技術により、プラズマ中の現象を直接見ながら、材料を加工製造することが可能となりました。この成果が世界で初めて実現された自立型プラズマナノ製造装置です。この装置は、低温プラズマを自ら制御し、指令された加工形状となるように装置自身が最適な製造プロセスを探索します。

 プラズマナノ工学研究センターとプラズマ医療科学国際イノベーションセンターと合同で、名古屋大学内ナショナルイノベーションコンプレックス(NIC)棟4階の約2000平米のフロアに約100台の研究装置を有する「プラズマ科学プラットフォーム」を構築いたしました。このプラズマ科学プラットフォームを駆使して、地球規模のエネルギーや環境で抱える問題の解決に向け、低温プラズマ科学による革新的な「材料創成」による社会的なイノベーションの創出を行います。

名古屋大学内ナショナルイノベーションコンプレックス(NIC)棟4階

「プラズマ科学プラットフォーム」の様子、利用者に安全教育する研究員

高度なプラズマ診断技術を有する自律型プラズマナノ製造装置

独自開発した最先端の計測技術に基づくプラズマによる材料の加工製造

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