実機飛行を通した航空実践教育の展開

航空宇宙工学専攻 教授 佐宗 章弘

 教室で航空工学を学んでも、すぐに飛行機を飛ばせるわけではありません。風洞試験で飛行機モデルの空気力学データを取得しても、実際に飛ばしてみるとその性能は大きく違います。現在の日本の大学の航空工学教育は、机上あるいはPC上の「空論」が殆どであるのが実態ですが、そこに実際に飛んでみる新たな「空験」を加えるべく、平成28~30年度宇宙航空科学技術推進委託費(文部科学省)航空人材育成プログラム「実機飛行を通した航空実践教育の展開」が、名古屋大学(代表)、東北大学、東京大学、東海大学、金沢工業大学、富山大学、信州大学、金沢大学、愛知工業大学、京都大学、大阪府立大学、鳥取大学、九州大学の13大学および一社)日本航空宇宙工業会を共同参画機関として採択されました。

 今後日本の航空産業の競争力を維持強化するためには、革新的な技術に挑む技術者・研究者の育成が不可欠です。本事業は、生きた航空工学を学ぶ機会を提供するスキームを構築して、学生の視野を広げ、向学心、産業へ意識を高め、航空分野の潜在的裾野の拡大、人材育成につなげることを目指しています。

 本事業の活動内容は、①全国の大学生を対象とする実機飛行教育、②共同参画機関大学におけるフライト関連教育・ミニ実験の推進および③中高生を対象とするアウトリーチ活動に大別されます。①では、ダイヤモンドエアサービス(株)が所有するMU-300機(図1)を利用して実機飛行実習を実施します。受講生は、共同参画機関の大学のみならず全国から公募し、年度あたり約40名の大学生に、1.5時間程度の飛行実習に参加してもらいます(平成29、30年度)。実習前に試験全体概要/強度試験概要/飛行試験実施法/飛行特性等に関する予備座学教育を実施し、飛行後にはデータの解析・評価を行ないます。参加学生には、一社)日本航空宇宙学会主催「飛行機シンポジウム」等での報告発表の機会も提供します。 ②では、これまで各大学で実施されてきた様々なフライト関連教育、小型飛行実験(ミニフライト実験)の成果と課題について、関係者による総合的な検討の場を設け、例えば、無人機飛行実験、風洞実験、数値シミュレーション、フライトシミュレーターを有機的に結び付けた教育プログラムを立案・実施します。特に、全体検討会には産業界からも出席者を招聘し、産業界のニーズをも踏まえた効果的な内容となるべく、情報・意見交換を行います。③は、一社)日本航空宇宙工業会の支援を得て、大学が持ち回りでアウトリーチ活動を実施します(図2)。その効果を上げるためには、その保護者の理解を得ることも重要であり、参加形態についても保護者の参観・参加を可能とするなどの配慮も施します。

 名古屋大学は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携協力協定を結んでおり、その一環として航空宇宙工学専攻に「航空宇宙機設計工学講座(連携)」を設置、現在7名の客員教員による講義、研究指導、論文審査を行っています。本事業の発展についても、同機構航空技術部門調布航空宇宙センター飛行場分室、名古屋空港飛行研究拠点などとの連携を模索していきます。

 イギリスでは、国内大学航空宇宙工学科の全ての学生が、クランフィールド大学による実機飛行実習を履修することが必修になっているとのことです。我国もそのような活きた航空教育を施す体制が確立することを目指して、オールジャパンでの取り組みにつなげていきたいと考えています。

図1 実習で使用する航空機(ダイヤモンドエアサービス(株)所有 MU-300)

図2 名古屋大学でのアウトリーチ活動(協力:紙飛行機を飛ばす会愛知)

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