Watanabe Daiki 渡邉 大貴

工学研究科 土木工学専攻 博士後期課程1年
  • 1994年生まれ
  • 2020年3月 東北大学大学院工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2020年4月 名古屋大学大学院工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2020年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)採用
渡邉 大貴

重量と応力値を制御するマルチマテリアルトポロジー最適化の研究

様々な工学分野において「マルチマテリアル化」と「3Dプリンター」によるものづくりは、次世代の製造・生産システムを担う革新的な技術として注目されています。マルチマテリアル化の利点は、軽量化だけでなく、単一材料では発現できない優れた性能や機能を引き出すことができる点にあります。3Dプリンターは、複雑形状でも比較的容易に造形できるため、目的に見合った合理的な構造を人の手を介さずに造形できることが特徴です。土木工学においては、オランダで図1(左)に示すような小規模ステンレス橋梁を造形する研究開発が盛んに進められています。このような最新のものづくり技術の動向から、複数材料の性能を最大限に引き出しつつ、3Dプリンターを見据えた合理的な構造形状を求めるため最適設計手法の開発が求められています。

このような背景から、私はそれを可能にするマルチマテリアルトポロジー最適化の研究を行っています。マルチマテリアルトポロジー最適化とは、最適化理論によって材料の最適配置、あるいは構造の最適形状を物理・数学的根拠に基づいて決定する数理的手法です(図1右)。しかしながら、現在のトポロジー最適設計の枠組みでは、構造全体を軽量化しながら発生応力を制御(各材料が許容できる応力の限界値を超過させないための操作)することが難しいとされています。

現在、私が提案しているマルチマテリアルトポロジー最適設計法は、材料配置を定義する設計変数の異種材料間で生じる勾配を用いて材料界面の物理量を定義するものです。これによって各材料および材料界面の応力値を制御することが可能となります。図2は、提案手法を用いて設計したもので、鉄とチタン合金を対象としたマルチマテリアル最適構造と鉄(単材料)による最適構造の性能を比較した結果です。ここでは、構造全体の重量が同じという比較条件下で、構造の変形量を最小にする最適化問題を解きました。その結果、両構造ともに各材料の許容応力度を満たしていますが、マルチマテリアル構造の方が目的関数値を小さくする、すなわち変形量を小さくできることを確認しました。

今後の展望としては、脆性破壊や座屈現象などといった、様々な構造分野において重要かつ扱いにくい非線形構造問題を対象としたトポロジー最適設計手法に関する研究へ拡張していきたいと考えています。

図1 3Dプリンターで作られたステンレス製歩道橋 (オランダ)、右)マルチマテリアルトポロジー最適化のイメージ図2 提案手法による最適化計算結果(マルチマテリアル構造によって変形量が小さくできる手法の開発に成功した例)

図1 左)3Dプリンターで作られたステンレス製歩道橋 (オランダ)、右)マルチマテリアルトポロジー最適化のイメージ

図2 提案手法による最適化計算結果(マルチマテリアル構造によって変形量が小さくできる手法の開発に成功した例)

図2 提案手法による最適化計算結果(マルチマテリアル構造によって変形量が小さくできる手法の開発に成功した例)

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