Takiguchi Asahi瀧口 あさひ

工学研究科 有機・高分子化学専攻 博士後期課程3年
  • 1994年生まれ
  • 2017年3月 京都大学理学部 卒業
  • 2019年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2019年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2020年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用
瀧口 あさひ

ポルフィリンの構造変換法の開発と生体応用

ポルフィリンは種々の構造変換が可能な分子で、その構造に応じて様々な物性を引き出すことができます。そのため、有機太陽電池や有機ELなどの材料への応用を目指して、盛んに研究が行われています。私はポルフィリンの新たな構造変換法として、ポルフィリンの環構造をいったん切断して開環し、これに炭素以外のヘテロ原子を挿入しながらポルフィリンを閉じる方法を開発しました。そして、得られた新規構造を有するポルフィリンの物性を調査しました。

ポルフィリン骨格をもつヘムは、生体内で酵素によって代謝されると、ポルフィリンが開いた構造になります。私は、この代謝過程を人工的に再現し、ポルフィリンの開環体を効率的に得る方法を開発しました。そして開環体を脱水縮合することで、ポルフィリン環に酸素が挿入されたオキサポルフィリンを合成しました。もともとのポルフィリンとは異なり、この分子は2つの異なる波長で発光するという二重蛍光性を示すことを見いだしました。そして、それが環の内側に存在する2つのNH基の位置の違いに起因することを明らかにしました。

さらに、オキサポルフィリンの金属錯体を合成し、ヘムタンパク質のヘムと入れ替えることで、人工ヘムタンパク質を作製しました。この人工タンパク質は、病原性を有する緑膿菌の増殖を抑える効果があることが分かりました。その効果はもともとのポルフィリンよりも強く、オキサポルフィリンが正電荷を有するために、増殖阻害効果が強く発現することが分かりました。

このようにポルフィリンの開環体から正電荷をもつオキサポルフィリンを合成し、それを活かした物性の解明や生体応用を行いました。現在は、酸素以外のヘテロ原子の導入を進めています。

図1 ポルフィリンの新規構造変換法

図1 ポルフィリンの新規構造変換法

図2 オキサポルフィリンを用いた人工ヘムタンパク質の調製

図2 オキサポルフィリンを用いた人工ヘムタンパク質の調製

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