Ishizaki Takuya石崎 拓也

機械システム工学専攻 博士後期課程修了
  • 1990年生まれ
  • 2015年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2018年10月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2019年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用
  • 2021年9月 宇宙航空研究開発機構 宇宙航空プロジェクト研究員
石崎 拓也

周期的熱応答のロックインイメージングによる熱物性マッピング技術の開発

電気自動車で大電流を扱うパワー半導体から厳しい宇宙環境下での小型化・高機能化が進む衛星搭載機器まで、内部発熱の高密度化により電子機器の熱マネージメントの重要性が増しています。これに対して高熱伝導複合材料やサーマルインターフェース材(TIM)を用いた低熱抵抗化が図られていますが、高精度な熱設計を実現するためには熱伝導率や接触熱抵抗を正確に評価することが極めて重要になります。しかし、高熱伝導複合材料は熱伝導率に異方的な分布が生じ、TIMは平面度などの様々な要因により熱抵抗に分布が生じますが、従来の単一方向の熱流を前提とした熱伝導率測定法や界面の平均的な熱流に基づく熱抵抗測定法では詳細な異方性/空間的分布の評価が困難でした。

この課題に対し、物体を周期的に加熱したときに周囲に広がる温度波の位相差から熱拡散率を測定する周期加熱法と温度波の周波数成分を可視化するロックインイメージングを組み合わせた3次元熱伝導分布計測法を開発しました。ここでは、面内および厚さ方向の熱拡散率分布を高精度・高空間分解能で求めるための基本原理、解析法、計測装置の構築を行い、高熱伝導複合材料の有する特異な3次元熱拡散率異方性分布を明らかにしました。そのほか、“等方性”黒鉛材料が±19%程度の熱拡散率分布を有するなど、従来手法では知り得ない材料固有の特異な性質を明らかにし、学術的にも意義のある成果が得られました。次に、本手法を界面熱移動現象に応用し、物質の境界面での温度波の多重反射を考慮した熱モデルの構築(図1)により界面熱抵抗分布(図2)をマイクロスケールで高感度に計測する手法を開発しました。

本手法は特殊な環境を必要とせず短時間で計測が可能で、また対象の切り出しを必要とせず現物を計測可能であることから、分布計測だけでなく熱伝導率や界面熱抵抗計測の新たな一般標準的な手法としても製品の熱設計や製造プロセスの効率化への貢献が期待できます。また固体接触界面の熱輸送において、理論計算・計測・実験の総合的な界面熱抵抗メカニズムに関する研究を可能にし、界面熱輸送特性制御のための基盤技術の確立と新たな熱界面材料の発見へと導きます。さらに本手法のマイクロスケール・非接触・非破壊という特徴から、はやぶさ2のリュウグウの粒子の熱物性計測法としても認められ、今後はリュウグウをはじめとした帰還物質の標準的な計測装置の開発に挑戦します。

図1 温度波の多重反射を考慮した三次元熱伝導モデル

図1 温度波の多重反射を考慮した三次元熱伝導モデル

図2 (左) 界面熱抵抗の線分布と試料側面の赤外画像、(右) 界面熱抵抗の面分布

図2 (左)界面熱抵抗の線分布と試料側面の赤外画像、(右)界面熱抵抗の面分布

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