有機・高分子化学専攻
SDGsを達成せよ!元素戦略を推進するキラル鉄(Ⅲ)光レドックス触媒の開発

有機・高分子化学専攻 教授 石原 一彰
有機・高分子化学専攻 助教 大村 修平

不斉反応(鏡映しの異なる分子を作り分ける手法)の開発は、医薬品の安定供給の実現に資する極めて重要な研究課題です。なかでも、触媒量の不斉源を用いて鏡像異性体を作り分ける「不斉触媒反応」は、野依良治博士らによる先駆的な研究以降、国内外で精力的に開発が進められています。

当研究室では、SDGsの観点から、安全安価で入手容易な元素を活性中心とした酸塩基複合触媒やレドックス触媒を用いる高次選択的不斉触媒反応を開発しています。今回、我々はキラル鉄(Ⅲ)光レドックス触媒を世界に先駆けて開発し、エナンチオ・ジアステレオ・レジオ選択的ラジカルカチオン[2+2]及び[4+2]環化付加反応を開発しました(図)。本研究により、多くの医薬品にみられる光学活性環式化合物の新規合成法を開拓したのみならず、元素戦略の要となる「鉄」に新たな価値を見出すことに成功しました。本研究成果は、アメリカ化学会誌 J. Am. Chem. Soc. (DOI: 10.1021/jacs.3c04010)に掲載されています。

(a)ラジカルカチオン[2+2]環化付加反応(上)とラジカルカチオン[4+2]環化付加反応(下)。ee、dr、rrはそれぞれ、エナンチオ、ジアステレオ、レジオ選択性を示す値。(b)反応の鍵中間体、キラル対アニオンがラジカルカチオン中間体の反応性を制御することでエナンチオ選択性が発現する。(c)反応系中で調製されるキラル鉄(Ⅲ)光レドックス触媒。

(a)ラジカルカチオン[2+2]環化付加反応(上)とラジカルカチオン[4+2]環化付加反応(下)。ee、dr、rrはそれぞれ、エナンチオ、ジアステレオ、レジオ選択性を示す値。(b)反応の鍵中間体、キラル対アニオンがラジカルカチオン中間体の反応性を制御することでエナンチオ選択性が発現する。(c)反応系中で調製されるキラル鉄(Ⅲ)光レドックス触媒。

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