電子工学専攻
イオンの移動を利用したライブセルイメージング技術を確立

電子工学専攻 教授 高橋 康史

超解像度顕微鏡をはじめとする新しい顕微鏡技術の発展により、光の開設限界を突破し、サブマイクロレベルの生細胞の構造が可視化されつつあります。我々は、ガラスナノピペットをプローブとして用いる生細胞計測に特化したユニークな走査型プローブ顕微鏡の開発を行っています。この顕微鏡では、ガラスナノピペットと細胞が存在しているディッシュにそれぞれAg/AgCl線を挿入し、電圧を印加することにより生じるイオンの流れを、イオン電流として計測します。このイオンの流れが、細胞近傍では、物理的にわずかに遮断されることで、イオン電流が減少します。このイオン電流の変化をフィードバックすることで、細胞の凹凸情報をナノスケールで取得することが可能です。この技術を用いて、細胞外物質の細胞内への取り込み過程であるエンドサイトーシスによる細胞の100nm以下の構造変化や(図1)、細胞間でのRNAのやり取りに利用されるエクソソームを直接可視化することに成功しました。(Anal. Chem. 2023, 95, 34, 12664–12672、プレスリリース)。本研究はJST創発的研究支援事業の一環として行われました。

図1 SICMの計測原理とHeLa細胞の形状イメージ、イメージのサイズは、20×20μm

図1 SICMの計測原理とHeLa細胞の形状イメージ、イメージのサイズは、20×20μm

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