有機・高分子化学専攻
従来と真逆の合成戦略により8の字型分子構造を構築
有機・高分子化学専攻 講師 福井 識人
8の字型にねじれた構造をもつキラルπ共役分子は3Dディスプレイ材料や暗号通信材料の基盤骨格として有望です。しかし、8の字型π共役分子は合成の標的としてはくせ者で、その骨格構築を従来のボトムアップ型合成戦略に基づく部分骨格同士の結合形成によって実施する場合、大量合成と不斉合成のいずれもが困難でした。
本研究では、平面π共役分子の骨格内部の結合を切るという、従来とは真逆の合成戦略によって、8の字型π共役分子を市販の原料から簡便かつ大スケールに合成することに成功しました。さらには、同専攻の石原教授・Uyanik准教授との共同で、この独自戦略を発展させ、標的分子の高エナンチオ選択的触媒的不斉合成にも成功しました。本研究成果は、8の字型π共役分子の構造特異性を活かした材料開発を進める上での基盤技術として期待できます。(掲載誌:J. Am. Chem. Soc. DOI: 10.1021/jacs.4c07985, オープンアクセス)

本研究成果の概要