応用物理学専攻
行列関数の数値計算アルゴリズムの開発

応用物理学専攻 准教授 曽我部 知広

累乗根、指数関数、対数関数、三角関数などの「初等関数」と線形代数で学ぶ「行列」、この2つの概念を合わせた「行列関数」は数学的にも応用的にも興味深い対象です。例えば、理論面では9の平方根は±3の2種類ですが、行列の平方根は無数に存在したり、存在しないことさえあります。また、初等関数と異なり行列関数同士の積は一般に非可換です。応用面では行列関数は、天体シミュレーションという巨視的スケールから、大規模電子構造計算(物性物理)、格子量子色力学計算(素粒子物理)などの微視的スケール、さらに情報科学(AI)や量子情報科学(量子通信)にも現れ、高速数値計算アルゴリズムの需要が高まっています。

そこで我々は数値線形代数・数値解析・精度保証の観点で相補的な理論研究を行い、さらにコンピュータを駆使して自然科学・情報科学を始めとした幅広い応用分野への貢献を図るべく研究を進めています。これまでに行列累乗根(行列実数乗)、行列指数関数、行列対数関数の新しい数値計算アルゴリズムを開発しました(図1)。今後それらの応用展開が期待されます。

図1 開発した行列対数関数の計算公式

図1 開発した行列対数関数の計算公式

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