材料デザイン工学専攻
ネオジム磁石の内部組織をシミュレーションで眺めてみよう

材料デザイン工学専攻 教授 小山 敏幸
材料デザイン工学専攻 准教授 塚田 祐貴

ネオジム磁石は、電気自動車のモータをはじめ、現代社会を支える磁石材料です。現在、ネオジム磁石は世界最高のハード磁性材料で、Nd2Fe14B相(以下、主相と記す)が、その磁気特性を担っており、我が国で発見されました。しかし単にこの主相があれば良い磁石となるわけではなく、優れた磁気特性発現には、主相が非磁性もしくは弱磁性の粒界相によって微細に分断されている必要があります。材料デザイン工学専攻 計算組織学研究グループでは、世界に先駆けて、この粒界相の組織形成過程のシミュレーションに成功しました。図1は粒界相(液相)の形成とその濃度場の時間変化、図2は粒界相(液相)の形成と粒界移動による濃度場の時間変化の計算例です。最近では、計算された組織形態情報と、磁気特性計算を機械学習によって結びつけ、磁石材料開発を加速する試みが注目されています。

図1 ネオジム磁石における粒界相形成のフェーズフィールドシミュレーション。上段がフェーズフィールドで、下段がNd濃度場の時間変化である。Nd結晶相が融け、Ndに富む液相が粒界相として、主相の結晶粒界を、薄く均一に覆っていく過程が計算されている。図2 ネオジム磁石における粒界シェル構造形成のフェーズフィールドシミュレーション(A-B二成分系のモデル計算)。上段がフェーズフィールドで、下段がB成分濃度場の時間変化である。液相が粒界相として主相の結晶粒界を薄く均一に覆うと同時に、主相の結晶粒成長が生じ、主相粒界付近にシェル構造が形成される過程が計算されている。
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