機械システム工学専攻
流体が乱れる・乱れないの新たな境目を発見~複雑流体による流体輸送の省エネ、流動制御に貢献~
機械システム工学専攻 教授 日出間 るり
高分子を極めて低濃度で添加した流体の流動挙動が、安定化(層流化)、不安定化(乱流化)する現象について、その境界を新たに発見しました。
高分子を添加した流体において、レイノルズ数(Re)の大きな条件下で流体の乱れが抑えられる抵抗低減(DR)という現象が観察されることは長年知られていたことでした。これに対して近年、乱流が生じるRe領域のうち、Reが比較的小さな条件では、高分子の添加が流体を完全に層流化させたり、高分子の弾性に由来する特殊な乱れを誘発し乱流化させたりする現象が見いだされました。しかし、これらの現象は流体の流速や高分子の濃度に比例しない、非線形性を伴うため定量化が難しく、高分子を添加した流体における層流と乱流の境目や、この変化が生じる条件は明らかとなっていませんでした。
我々は、高分子の伸長と緩和という形態変化と、Reで決まる条件によって、流体の層流・乱流が決まることを明らかにしました。流動場の層流・乱流を制御することにより、流体輸送の省エネルギー化、効率的な攪拌技術の開発、高分子溶液の射出制御など、流体関連プロセスの技術革新への貢献が期待されます。
本研究成果は、Physics of Fluids 36, 103128 (2024)に掲載されました。

乱流と層流のイメージ図
