有機・高分子化学専攻
ヨウ素触媒を用いた"アルコール常温酸化法"を開発
有機・高分子化学専攻 准教授 ウヤヌク ムハメット
有機・高分子化学専攻 教授 石原 一彰
有機・高分子化学専攻 教授 石原 一彰
アルコールの酸化は有機合成化学において基本的な反応の一つですが、従来法の多くは重金属酸化剤や貴金属触媒に依存し、環境負荷や基質適用範囲に課題がありました。我々は元素戦略の観点からヨウ素を活用した触媒開発に取り組んでいます。既に、酸化剤としてオキソンの存在下、2-ヨードベンゼンスルホン酸塩(pre-IBS)から調製されるIBS(V)を触媒とした酸化法を報告しています。しかし、オキソンの溶解性が低く70℃まで加熱が必要で、熱や酸に不安定な基質には適用できませんでした。今回、反応機構を詳細に検討し、非水系条件下ではpre-IBS からIBS(Ⅲ)への初期酸化が律速段階であることを明らかにしました。この知見に基づき、(i)相間移動触媒によるオキソンの溶解性の改善と(ii)IBS(Ⅲ)の直接調製を組み合わせ、常温付近で効率的に酸化を実現しました。特に4,5-Me2-IBS(Ⅲ)が高性能を示し、以前に報告した方法では副反応が問題となっていた基質にも適用可能となりました。さらに、本触媒系を用いたワンポット酸化的エステル化にも成功し、医薬品や精密化学品の合成工程短縮と廃棄物削減に寄与すると期待されます。
本成果は英国王立化学会誌Green Chemistry(DOI: 10.1039/D5GC01737H)に掲載されました。
IBS(Ⅲ/V)/オキソン触媒によるアルコールの常温酸化の概念図