Ishikawa Kohei石川 晃平

工学研究科マテリアル理工学専攻 博士後期課程4年
  • 1992年生まれ
  • 2016年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2016年9月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2018年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用

負極集電体の結晶方位に着目した金属リチウム負極のサイクル特性改善

現在、リチウムイオン電池の負極材料には炭素負極が広く用いられています。この負極材料に金属Liを用いることで、より高いエネルギー密度の二次電池を構成できることは古くから知られています。しかしながら、充放電に伴う電極形状の不均一化(デンドライト析出)による充放電効率の減少が、金属Li負極の実用化への障害となっています。この問題に対して、電解液組成の最適化や添加物の使用など様々な対策が試みられてきましたが、金属Li負極の基盤となる負極集電体に関してはこれまでに検討されてきませんでした。一方、結晶成長の観点から考えると、基板の結晶方位は、その上に析出する負極の性質に影響を及ぼすはずです。このような考えをもとに、私たちはこれまでに負極集電体の結晶方位が金属Li負極に及ぼす影響を研究してきました。

まず私たちは、一般的に負極集電体として用いられる多結晶Cuを基板として用い、その上に析出した金属Liの析出形状の変化を調べました。その結果、金属Liは球状の析出物として負極上に析出し、その密度とサイズはCuの結晶粒ごとに異なっていることがわかりました(図1)。そこで、各結晶粒上における析出Liの形状と結晶方位の関係を横断的に調べたところ、最も析出物の密度が高く、均一な析出形状となる結晶方位は(111)であることがわかりました(図2)。以上の結果より、これまでにほとんど注目されてこなかった集電体の結晶方位が、実は金属Liの析出形状に大きく影響を及ぼしていることが明らかになりました。さらに、単結晶Cuを負極集電体に用いると、析出形状は全面で同様となり、Cu(111)単結晶では均一で密度の高い析出物が生じることがわかりました。以上の結果より、Cu(111)配向を有する集電体が、デンドライト析出の抑制に最も効果的であることが期待されます。

現在は、上記の結果に基づいて、負極集電体の結晶方位が金属Li負極の充放電特性に及ぼす影響を調査しています。結晶成長を電池の研究に応用することで、金属Li負極の実用化に少しでも貢献できるように頑張っていきます。

図1 負極集電体上に析出した金属Liの走査型電子顕微鏡での観察。(a)全体像、(b)-(c)各結晶粒上における拡大像。

図1 負極集電体上に析出した金属Liの走査型電子顕微鏡での観察。(a)全体像、(b)-(c)各結晶粒上における拡大像。

図2 析出Liの径のばらつき(標準偏差)・密度とCu集電体の結晶方位との関係。

図2 析出Liの径のばらつき(標準偏差)・密度とCu集電体の結晶方位との関係。

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