Kobayashi Atsuki小林 敦希

工学研究科電子工学専攻 博士後期課程2年
  • 1993年生まれ
  • 2018年3月 名古屋大学工学研究科 博士課程(前期課程)修了
  • 2018年4月 名古屋大学工学研究科 博士課程(後期課程)進学
  • 2018年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)採用

バイオ燃料電池と集積回路を用いた低消費電力バイオセンサシステムの開発

半導体集積回路は、様々なディジタル機器に搭載されており、それらを支える重要な技術です。半導体集積回路技術を用いることで、無線通信・電力管理・信号処理などの機能を小さなチップ上に集積することが可能になります。特に、Complementary Metal-Oxide-Semiconductor(CMOS)集積回路は低消費電力や低コストといった優位性があることで知られています。そのため、ディジタル機器に搭載されているシステムは、CMOS集積回路技術を用いて構成されているのが主流です。

本研究は、このようなCMOS集積回路技術を軸に、バイオ燃料電池と集積回路を組み合わせた低消費電力なバイオセンサシステムの開発を目的としています。バイオ燃料電池は、血液中に存在するグルコースなどの生体分子を燃料として、その化学エネルギーを利用して発電することができるデバイスです。さらに、その発電量は燃料である生体分子の濃度に依存することが分かっています。そのため、バイオ燃料電池から得られる電力を集積回路の動作に利用しながら、発電量をディジタル信号に変換するインターフェース回路を実装することで、より効率的に電力を利用するバイオセンサシステムを実現できると考えています。しかしながら、バイオ燃料電池が出力する開回路電圧は0.3‒0.5V程度とCMOS集積回路の定格電源電圧よりも低いため、トランジスタの閾値電圧よりも低い領域(サブスレッショルド領域)で安定した動作を実現するための回路技術が求められます。

試作したバイオセンサシステムのプロトタイプ(図1)は、サブスレッショルド領域で動作可能なディジタル回路の設計思想をもとに、発振器・温度センサ・誘導結合無線通信回路を構成することで、電源電圧0.19Vでの動作に成功しました[1]。現在は、このプロトタイプのさらなる性能向上を目指し、新しい回路アーキテクチャの設計および評価[2]を行っています(図2)。多岐にわたる既存の回路技術を応用しながら、より実用的なバイオセンサシステムを提案できるよう、研究を進めていきたいと考えています。

[1]A. Kobayashi, K. Ikeda, Y. Ogawa, H. Kai, M. Nishizawa, K. Nakazato, and K. Niitsu, “Design and experimental verification of a 0.19 V 53 μW 65 nm CMOS integrated supply-sensing sensor with a supply-insensitive temperature sensor and an inductive-coupling transmitter for a self-powered bio-sensing system using a biofuel cell,” IEEE Trans. Biomed. Circuits Syst., vol. 11, no. 6, pp. 1313‒1323, Dec. 2017.
[2]A. Kobayashi, K. Hayashi, S. Arata, S. Murakami, G. Xu, and K. Niitsu, “A 65-nm CMOS 1.4-nW self-controlled dual-oscillator-based supply voltage monitor for biofuel-cell-combined biosensing systems,” in Proc. IEEE Int. Symp. Circuits Syst. (ISCAS), 2019, pp. 1‒5.

図1 試作したバイオセンサシステムのプロトタイプ[1]©2017 IEEE

図1 試作したバイオセンサシステムのプロトタイプ[1] © 2017 IEEE

図2 発電量信号変換回路のチップ写真と回路レイアウト[2]©2019 IEEE

図2 発電量信号変換回路のチップ写真と回路レイアウト[2] © 2019 IEEE

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