KIM Dasomキム ダソム

工学研究科 物質プロセス工学専攻 博士後期課程3年
  • 1994年生まれ
  • 2019年8月 國立釜慶大学工学研究科 博士前期課程修了
  • 2019年10月 名古屋大学工学研究科 博士後期課程進学
  • 2022年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用
キム ダソム

低酸素粉末冶金による軽量、高強度、高電気伝導性Al‐CNT複合材料の開発

私はカーボンナノチューブ(CNT)とアルミニウムナノパウダーから複合材料を生産する工程技術を研究しています。韓国の國立釜慶大学の修士課程を卒業し、博士号を取得するために名古屋大学に入学しました。今は学振特別研究員(DC2)として国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)との共同研究に従事しています。

近年、温室効果ガス排出の問題を解決するために、電気自動車への関心が世界的に高まっています。電気自動車に使用される各種電気部品には、高い機械的強度、高電気伝導性、軽量性(低比重)を兼ね備えた材料の開発が求められています。その中でCNTの優れた強度とアルミニウムの低比重・高電気伝導性を組み合わせた「アルミニウム-CNT複合材料」に期待が集まっています。

アルミニウム-CNT複合材料の開発には、(1)CNTの均一分散、(2)アルミニウムとCNTの界面反応制御、(3)CNTの配向制御など、さまざまな課題があります。このようなチャレンジに対処するために、表面に酸化膜のないナノサイズのアルミニウム粉末を製造する「低酸素誘導熱プラズマ(LO-ITP)」を用いた開発を行っています。複合材料を製造するときは、CNTとアルミニウム粉末を均一に混合する必要があるため、アルミニウム粉末とCNT粉末の大きさが同程度であることが必要です。すなわち、ナノレベルのアルミニウム粉末が必要です。私はAISTで酸素濃度を0.5ppm以下に制御したグローブボックス内で焼結までする「低酸素粉末冶金工程」を利用して、アルミニウムナノ粒子を用いた複合材料製造技術に取り組んでいます(図1)。

これまでの研究では、LO-ITPで製造したアルミニウムナノ粉末とCNTとの均一な分散を達成しました(図2)。また、アルミニウムナノ粉末同士を接触させたとき、その界面に酸素を含む層が見られず、アルミニウムが接合されている様子を原子レベルの観察で確認しています(図3、[1]) 。 LO-ITP処理したアルミニウムナノ粉末を母材として使用して課題(1)(2)を解決することにより、従来より高い機械強度と電気伝導度を持つアルミニウム-CNT複合材料の製作に成功しました。

この低酸素粉末冶金法は、高解像度3Dプリントやナノインプリントなど他の産業にも拡張可能です。これらの研究に基づいて、最終的には粉末冶金の様々な産業や学問の発展に貢献することを目指しています。

[1] D. Kim, Y. Hirayama, Z. Liu, K. Takagi, and M. Kobashi, Nanomaterials 11 (2021).

図1 低酸素誘導熱プラズマプロセス

図1 低酸素誘導熱プラズマプロセス

図2 CNTとアルミニウムナノ粉末を混合した状態

図2 CNTとアルミニウムナノ粉末を混合した状態

図3 アルミニウムナノ粉末間の接触界面[1]

図3 アルミニウムナノ粉末間の接触界面[1]

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