Matsui Masayoshi松井 聖圭

工学研究科 土木工学専攻 博士後期課程1年
  • 1997年生まれ
  • 2022年3月 名古屋大学工学研究科 博士前期課程修了
  • 2022年4月 名古屋大学工学研究科 博士後期課程進学
  • 2022年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)採用
松井 聖圭

積層造形土木材料の最適な微視構造を設計する高性能トポロジー最適化手法の開発

今日では、3Dプリンティング、すなわち積層造形を用いたものづくりの波はコンクリートやFRPといった土木材料にまで広がっています。こうした「積層造形土木材料」において期待されているのは、図1のような細かな単位構造が周期的に並んだ構造(ラティス構造)の造形技術です。既存の構造物にこのような新しい構造形態を取り入れることで、軽量化をはじめ、何らかの力学的な要求性能に特化するような理想的な設計が可能となります。

このような設計問題に対して、周期性を有する微視構造を巨視的に均質材料とみなし、構造幾何(マクロ)と材料幾何(ミクロ)の一方あるいは両方を数値解析に基づき設計する「マルチスケールトポロジー最適化」の研究が盛んに試みられています。しかしながら、微視構造の積層造形とマルチスケールトポロジー最適化を融合した構造設計を実現するためには、計算コストや造形可能性、材料挙動の再現性にまつわるさまざまな課題を解決する必要があります。

たとえば、既往の最適化手法では、解析モデルの緻密化(メッシュ数の増加)に対する計算コスト(計算時間・必要メモリ)の増加が著しく、3Dプリンタによる精密な造形を前提とした高解像度の解析が困難であるという課題があります。そこで私は、高速フーリエ変換に基づく均質化アルゴリズムの優れた計算効率に着目し、これを組み込んだ新しい最適化手法を開発しました。これまでに行った線形弾性材料を対象とした解析では、計算時間を数十分の一に短縮しており、また、必要なメモリ量を削減したことで、より高解像度の解析を可能なものにしました。

他にも、より望ましい構造物の全体性能を得るため、異なる複数の微視構造を設計して適材適所に配置した場合、それぞれの境界が不連続となってしまい、実際には造形できないという課題があります。以前より、境界をなめらかに接続するためのさまざまな方法が提案されてきましたが、そのほとんどが幾何的(視覚的)な接続性に着目したものでした。それらに対し、私が提案する手法は、境界面の巨視的な挙動を構造解析により評価することで力学的な接続性を改善するものであり、図2に示すような、連続で造形可能な構造の設計を実現しました。

現在では、実材料の特性や造形プロセスに依存する特有の力学挙動を再現することを目的に、非線型材料モデルを用いた手法の拡張に取り組んでいます。

図1 短繊維CFRPラティス構造の積層造形の例
(150×150×50mm)

図1 短繊維CFRPラティス構造の積層造形の例
(150×150×50mm)

図2 異なる複数の微視構造を含む最適設計の例
   上:既往の手法による不連続な構造
   下:提案した手法による連続な構造

図2 異なる複数の微視構造を含む最適設計の例
   上:既往の手法による不連続な構造
   下:提案した手法による連続な構造

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