Li Xu李 旭
- 1997年生まれ
- 2022年3月 名古屋大学工学研究科 博士前期課程修了
- 2022年4月 名古屋大学工学研究科 博士後期課程進学
- 2023年4月 日本学術振興会 特別研究員(DC2)採用
希土類金属酸化物準結晶薄膜の創製と物性開拓
1984年、準結晶は結晶でもアモルファスでもない特異な構造を持つ固体として発見されました[1]。準結晶は結晶と同じように並進周期性を持つ一方で、結晶には許されてない5回、8回、10回、または12回などの回転対称性というユニークな特徴を持っています。その準周期配列は、基本クラスターの重なりによって記述できることが判明しました。当初、準結晶は金属間化合物のみから作製可能であると考えられていましたが、近年ではコロイドや高分子からなる準結晶も報告されています[2]。そして、2013年、白金表面上において特徴的な12角形クラスターが形成されているBa-Ti-O酸化物準結晶超薄膜が発見されました[3]。さらに、酸化物準結晶と同様に四角形および三角形からなる近似結晶超薄膜も観察されました[4]。また、白金表面上にも同じクラスターを持つ酸化物準結晶Sr-Ti-O超薄膜が創製されました[5]。
私の研究グループでは、超高真空のチャンバー内で白金表面上にBa-Ti-O酸化物準結晶と近似結晶超薄膜を国内で初めて創製することに成功しました[6]。そして、私の研究では、白金表面上の異なるBa-O超薄膜を出発点として、Ba-Ti-O近似結晶および準結晶超薄膜の作製をし、結果をまとめて、それぞれの最適な化学組成を明らかにし、構造モデルを提案しました(図1)[7]。
現在、基礎研究から発展して磁性の物性開拓へと移行するために、準結晶に含まれるBaを周期表上で近い位置にある希土類金属元素に置き換えることで希土類酸化物準結晶超薄膜を創製する研究を行っています。昨年度、4f電子を持っている希土類金属Ce-Ti-O酸化物準結晶関連構造超薄膜を創製することに成功しました(図2)[8]。準結晶のクラスターに基づいて、実験から計算した組成比と原子密度、及び対称性を考慮して、構造モデルも提案しました(図2)。
また、酸化物準結晶の創製範囲を広げるために、希土類金属Ybも使って、Yb-Ti-O酸化物準結晶超薄膜を創製する研究をしています。そして、Ce-Ti-O準結晶関連の構造モデルについて、第一原理計算に基づいて構造を最適化しています。今後の予定として、作製できた酸化物準結晶、近似結晶と準結晶関連構造の磁性や誘電性などの物性を評価します。酸化物準結晶の基礎研究だけではなくて、応用にも貢献できるように精進していきます。
[1] D. Shechtman et al., Phys. Rev. Lett. 53, 1951 (1984).
[2] A. Gemeinhardt et al., EPL 126, 38001 (2019).
[3] S. Förster et al., Nature 502, 215 (2013).
[4] S. Förster et al., Phys. Rev. Lett. 117, 095501 (2016).
[5] S. Schenk et al., J. Phys.: Condens. Matter 29, 134002 (2017).
[6] J. Yuhara et al., Phys. Rev. Materials 4, 103402 (2020) .
[7] X. Li et al., Appl. Surf. Sci. 561, 150099 (2021).
[8] X. Li et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 25, 26065 (2023).