応用物理学専攻
温めると縮むセラミック微粒子
応用物理学専攻 教授 竹中 康司
ほとんどの材料は、温めると膨らみます。「熱膨張」と呼ばれます。熱膨張は、どんなに目をこらしてみても、肉眼では確認できない程度の、一般的な感覚からすれば、小さな変化です。しかし、産業技術の高度な発達により、例えばナノメートル(百万分の1ミリメートル)・レベルの高精度が求められる半導体デバイス製造や精密機器などでは、熱膨張による部材のわずかな変形すら深刻な悪影響をもたらします。また、複雑化が進んだ電子デバイス分野では、構成素材間の熱膨張の違いにより剥離、断線等の致命的な不具合が生じます。私どもが開発する、温めると縮む「負熱膨張」の性質を示すZn2-xMgxP2O7セラミック微粒子は、室温を中心に広い温度範囲で強力に熱膨張を抑制できます。現在市販の負熱膨張材料に比べ、10倍以上の熱収縮能力を示します。優れた機能に加え、亜鉛、マグネシウム、リンといった、環境にやさしく安価な生体必須元素だけでできている点にも大きな特色があります。粒径を1マイクロメートル(百万分の1メートル)程度に小さくしても、負熱膨張の機能が損なわれないところに私どもの技術があります。電子情報通信はじめ、プロセス、光学、航空・宇宙、エネルギーなど、様々な分野で、熱応力・熱歪が原因で生じるデバイスやシステムの不具合を解消すると期待されます。名古屋大学発ベンチャー企業・株式会社ミサリオにおいて、社会実装を目指した取り組みがなされています。