マイクロ・ナノメカトロニクス研究センターセミナー開催
未来社会創造機構 特任准教授 上出 寛子
東京工業大学の森政弘名誉教授による講演会が、マイクロ・ナノメカトロニクス研究センターセミナーとして開催されました。森先生は、世界に先駆けてロボット研究分野を開拓し、不気味の谷現象の発見者、また、ロボットコンテスト創始者として広く知られています。また、本学の電気学科9回生でもあります。
講演のタイトルは、「心を故郷へ帰す-今後の科学技術に絶対必要なこと-」でした。幼少期から物作りに没頭していた先生は、学生時代には名フィルでフルートを演奏し、その後は本田宗一郎氏とも交流が深かったそうです。そういった数々の場面で、先生は常に主体的な「遊」の姿勢を貫き、合理だけでは解けない矛盾を、智慧によって乗り越えてきました。智慧を身につけるには、知識を蓄える座学だけではなく、対象と自己の境界がなくなるほど物事に没頭する「三昧」の体験が必要だそうです。
特に、科学技術の進歩がもたらした現代の危機的状況に対しては、鋭い指摘がありました。それは、自然の本性は、流動・循環・制御であるが、現代では、循環が滞り、制御が失われている、ということです。これに対し、今後の科学技術を担う研究者は、「自然は全きもの」という畏敬の念と、人間の欲望を制御する重要性を強く意識する必要があります。私たち研究者が、人間の故郷である自然へと心を帰す必要性について、名古屋で育った森先生が、故郷に帰って講演したという、非常に貴重な機会となりました。