国産電動航空機はヴァーチャルで空を飛ぶ

未来材料・システム研究所
工学研究科 電気工学専攻 教授
山本 真義

私が生まれた1973年に戦後初の国産旅客機YS-11が生産中止となった後、日本製の旅客機は2020年現在、未だ世界の空を飛んでいません。その間、ほぼ半世紀。電機産業や自動車産業において大きな功績を残してきた我が国は、航空機産業では北米や欧州の航空機メーカーに遅れを取っているのが現状です。

しかしながら、航空機産業にも新しい技術潮流が押し寄せてきました。電動化です。皆さんもニュース等でご存知の通り、既に小さな飛行機は電気だけで飛ぶ時代がやってきています。そして、日本は自動車産業では電動化技術で世界を牽引してきた実績があります。これらの電動化技術を飛行機に応用すれば、新しい電動航空機の時代を先導することができるのでは、と期待が高まります。しかし、航空機を製品として空に飛ばすためには、様々な法律、安全性、環境性能が問われ、これまでの長いノウハウを持つ欧米航空機メーカーに一日の長があると言わざるを得ません。

こういった背景を受けて、私達は、もちろん北米メーカーと一緒に実際の電動航空機の研究もしておりますが、あえて電動航空機をヴァーチャル上で飛ばすことを研究しています。仮想上で電動航空機を飛ばすことができれば、例えば電動航空機に搭載されるインバーターと言われる電力を直流から交流へ変換する装置の半導体の種類を変えることで、どの様な性能向上が見られるか、を直ぐに確認することができます。日本はかつて、半導体で世界を席巻してきました。そしてその半導体はこれまで広く使われてきたシリコン(Si)から、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)という新しい材料と置き換わる転換期を迎えつつあります。この新材料半導体においても日本は技術先行しており、窒化ガリウム半導体の技術に対して、2014年に日本の研究者がノーベル賞を受賞しています。日本が誇る半導体技術を、先んじて電動航空機で評価することができれば、次世代の航空機産業への戦略を立てることができ、我が国の新しい産業の活性化に繋がると期待して、研究を行っています。

ですが、ヴァーチャル上で電動航空機を飛ばすためには、幅広い知識が必要になります。電気を利用するための電機応用、半導体応用技術、モーターやバッテリ技術に加え、ギア、プロペラ、機体、空力といった力学的な知見も重要であり、それらを全て、仮想上にプログラムとして取り込んでいかなければなりません。これまでは日本は専門性の高い技術を尊ぶ風潮がありました。しかしながら、応用を見据えた場合は、前述の通り、電気も力学もコンピューターも、全ての知識を動員、融合しながら、新しい技術領域を広げていかなければ、新時代の応用技術に対応することができません。2020年秋に私達の研究グループは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)航空技術部門と共同で電動航空機のモデル(名古屋大学-ECLAIRモデル)を作成し、ヴァーチャル上で空を飛ばすことに成功しました(図1、図2参照)。私達は、近い将来、国産の電動航空機が世界の空を舞うことを夢見て、日々、研究を行っています。

図1 電動航空機と構築モデル

図1 電動航空機と構築モデル

図2 構築した力学・電気融合モデルとその性能

図2 構築した力学・電気融合モデルとその性能

研究紹介一覧に戻る