モビリティの変革と都市交通計画

未来材料・システム研究所
工学研究科 土木工学専攻 准教授
三輪 富生
応未来材料・システム研究所 工学研究科 土木工学専攻 准教授 三輪 富生

モビリティの変革が進みつつあります。その重要な要素の一つが自動運転技術です。ドライバーが運転から解放され、移動中に仕事や娯楽活動が行えるようになると、できるだけ早く到着することが望ましかった移動に対する考え方が変わり、移動の価値が変わります。また、自動運転タクシーが効率的に運用されるようになれば、自家用車の保有をやめる家庭が増えることも考えられます。さらに、自動運転車は車車間通信が可能で、人の運転よりも反応時間が短くミスも少ないため、交通事故が減少するだけではなく、短い車間距離で隊列走行ができるなど、道路の効率的利用も期待できます。私たちの研究室では、そのような自動運転車による社会の変化の予測や、自動運転車が走る道路交通のマネジメント技術の開発を行っています。例えば、自動運転車がどのような形態で普及するかによって、都市のあり方や道路の交通量が変わります。つまり、人々が自家用車の保有をやめて自動運転タクシーを使うようになれば、街中の駐車場が不要になり、新たな魅力ある施設を建設することができます。一方で、送迎移動が増え、道路交通量は増加するかもしれません。このように、魅力ある街づくりのためには、自動運転車の普及や人々の移動を予測する必要があります。

また、自動運転車の配送方法も研究しています。例えば、交通流が自動運転車のみで構成され協調的制御が可能になれば、交差点交通流を制御する信号機が不要になります(図1)。私たちは、どのように自動運転車を制御すべきで、どの程度の効果が得られるのかについても研究しています。

その他の将来のモビリティとしては、エアタクシーも話題になっています。大阪万博でデモ飛行が計画されていますし、世界中の企業が実用化に向けた技術開発を続けています。私たちの研究室では、いくつの離発着場をどこに配置することが、人々の生活における利便性を高めることができるかについても研究しています(図2)。

モビリティではありませんが、近年、我々の交通移動やライフスタイルを大きく変えた技術として、コロナ禍を経て広まったテレワークやオンライン会議があります。テレワークが社会に与える影響は、1990頃から多くの研究がなされてきました。多くの研究で着目されている点は、テレワークの普及によって、“交通移動が減るのか?”、“居住地の郊外化が進むのか?”の2点です。その影響は、調査する国や時期によって異なることが報告されており、共通した知見が得られていません。日本では、今後どのような影響が生じるでしょうか。

このように、これからの私たちの交通やライフスタイルについては未知な点が多く、より良い社会を創造するためには、それ等の影響を精緻に予測し、説得力ある説明ができることが大切です。そのために、私たちは研究を続けています。

図1 交差点における自動運転車の協調制御

図1 交差点における自動運転車の協調制御

図2 エアタクシー離着陸場の配置計画

図2 エアタクシー離着陸場の配置計画

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