工学研究科附属フライト総合工学教育研究センター設立にあたって
省エネルギー、低環境負荷で、なおかつ速く、安く、安全な「フライト」を実現するためには、最先端技術を取り入れ、なおかつ様々な要素と分野をインテグレートすることが必要です。このような「フライト総合工学」を全面に掲げた附属センターを、この4月に設立しました。
航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、どれを挙げても、これからの時代の要請にこたえる高性能のフライトを実現するためには、マテリアル、電気電子情報、機械・航空宇宙、エネルギー、さらには宇宙地球環境、情報学、未来に向けた新しいシステムの創出など、横断的分野の知識、経験、研究開発手法を統合して人材育成、研究開発を推進することが必要です。これまで、宇宙航空研究開発機構(JAXA).名古屋大学間の連携協力協定のもと、航空宇宙工学専攻内に「航空宇宙機設計工学講座(連携)」を開設、航空宇宙教育プログラム「産学官のリソースの活用により基礎から実践を通貫する航空宇宙教育の展開」の採択による社会人.学生混成教育「Design Build-up Team(DBT)養成講座」およびそれを発展させた「航空機開発グローバルプロジェクトリーダー(GPL)養成講座」の開講、さらに、平成28〜30年度文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費航空人材育成プログラム「実機飛行を通した航空実践教育の展開」により、本学が代表となり全国13大学等が協力して、学部生を対象とする実機飛行実習等を実施してきました。平成24年度からは、ボーイング社より教育研究支援を受けています。今後、産業規模の成長に伴いますます期待が高まるフライト総合工学教育、最先端研究プロジェクトを、関連分野のポテンシャルを結集して推進するために、本センターを設置しました。
本センターの教育活動としては、GPL養成講座の継続的開講/実機飛行実習の自立実施/風洞の共通利用化による学部・大学院の教育研究の充実/学部生、大学院生主導フライト関連プロジェクトへの支援/産業界講師による集中講義およびキャリアパス開発/原子力分野との分野横断教育体制による「安全・信頼性工学(大学院総合工学科目)」の実施/宇宙航空研究開発機構(JAXA)連携講座の客員教員による、より広範な分野をカバーした高等教育の実践/小中高生、保護者、教員への啓発活動、直接対話/メーカー企業、研究機関、金融・ビジネス、自治体・省庁など幅広い分野と連携したセミナーの開催、インターンシップの斡旋/博士後期課程学生、若手研究者とフライト総合工学関連企業との交流の促進等を予定しています。本年8月9日には、本学にて、全国から高校生を集めて、JAXAとの共催で「名古屋エアロスペース2018」を開催し、その後も定例行事とする予定です。
また、研究面では、本学の強みであるパワーエレクトロ二クス、複合材等の最先端技術の統合による航空機電動化研究開発プロジェクト、本学で考案・開発されたデトネーションエンジンの飛行実証、その他のプロジェクトを分野横断的組織で取り組みます。
以上の活動を通して、次世代を担う潜在的人材にアピールし、在学生に魅力的なフライト総合工学教育研究の場を提供し、多様な関連分野に人材を輩出することを、多くの皆さんのお力をお借りして実現していきたいと考えています。ご支援、ご協力の程、よろしくお願いいたします。
実機飛行実習の様子(平成29年度宇宙航空科学技術推進委託費 航空人材育成プログラム「実機飛行を通した航空実践教育の展開」にて実施)